ハイブリッドコンサルタント

2014年9月22日月曜日

【研究会】「これから必要とされるコンサルタント」~安定したコンサル業務を続ける秘訣

16日の夜は所属している研究会の定例会。最近、チーム活動ばかりで定例会はサボリ気味だったので(苦笑)久しぶりの参加でした。





テーマは
『「これから必要とされるコンサルタント」~安定したコンサル業務を続ける秘訣』
講師は株式会社ビジネスサポートコンサルタント代表取締役の森田耕一朗さんでした。 
 
うかがった話を個別に分解すると、以前どこかで誰かから聞いたことがあることが多いとは思いました。まったく未知の話ではありません。たとえば「スペシャリストであり、スペシャリストを使えるジェネラリストたれ」というのはある意味「T型人間」を目指せということに通じる話です。

しかし、一連の流れで、トータルで聞くと、「そういうことか」「だからそうなるといいのか」と納得できることが多々ありました。事業再生の現場で切った張ったをされている方のお話は迫力がが違うと思いました。

コンサルタントは簡単に「自称」できてしまいます。別に診断士の資格がなくてもコンサルタントは名乗れます。弁護士や会計士、税理士のような独占業務があるわけではなく、診断士の資格より「○○というコンサルティングファームにいました」というほうが箔がつく場合も多いわけです。

コンサルタントとしての価値を決めるのは自分ではありません。誰かに「認めてもらう」ことなしには本物にはなれない。信頼され、頼られ、必要とされる人。あなたにお金を払いたいと思ってもらえる人。そうならないとコンサルタントとは言えないわけです。そのために何をすればいいのか、どこに向かえばいいのか、ヒントをいただけたと思います。


それと、根っこに眠っていた反体制志向のようなものがむくむくとわいてきまして(苦笑)。別に銀行や大企業が体制側だなんて決めつけるつもりもないですが、「中小企業」診断士である以上、中小企業の側に立って動いてきたいと思います。

最近の一部大企業の下請けに対する対応は、そうとうおかしいと思うことがあります。形だけトヨタの真似をするのはやめろ、と思ったりします。「仏作って魂入れず」というのが多いと感じています。それには対抗していかないと、と思っています。

あまり得はしないのですが、その志向でやっていくつもりです。


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2014年9月13日土曜日

【書評】企業内診断士、被災地での挑戦

企業内診断士、被災地での挑戦~「気仙沼バル」成功の裏側~



同じ「企業内診断士」という立場の者として、できる限り自分ごとに引きつけて読んでみました。ちょっと嫉妬心を覚えてしまうなほどです。企業内診断士のひとつのローモデルがここにあります。

<目次>
第1章 企業内診断士交流会に端を発した被災地での活動
第2章 企業内診断士、気仙沼バル開催への挑戦
第3章 気仙沼バルの運営・分析と提言
第4章 気仙沼バルにおける人とのつながり


所属する企業の枠を超えた診断士グループが、被災地・気仙沼の仮設商店街支援に取り組んでいる、そのレポートです。「気仙沼バル」というイベントを立ち上げて、それを継続しています。(すでに3回開催し、来年の4月も予定されています。)

この本、第4章をぜひ読んでほしいです。この章は支援した診断士が書いているのではなく、支援先の3つの仮設商店街の方をはじめとする気仙沼の方々のインタビューや寄稿を中心に構成されています。いかにこの活動が地元の人に受け入れられ、今後も期待されているかわかると思います。

去年の9月の終わり、第二回気仙沼バルの前の週に気仙沼に行きました。復興屋台村で飲んでいたのですが、バルの話題はかなり聞きました。当時まだ登録が終わってなかったのですが、同行していた人が
「この人、診断士なんですよ」
と紹介されたりすると、感謝の言葉をかけてくれたり、熱を込めてバルへの期待を語られたりする店主の方が何人もいらっしゃいました。(僕自身はこの活動にまったく関わりがあるわけでもなく、なにかをしたわけでもないのですが(苦笑)、診断士というだけでそういう風に声を掛けてくれる方がいたのです)

つまりそのころから、こうした活動は意義深いと思っていたし、ある意味、関わっている人が羨ましいなあ、と思っていたわけです。

特に「第二回」ということを聞いて、素晴らしいと思いました。気仙沼バル自体はこの記事を通して知っていました。⇒J-NET21「気仙沼復興支援プロジェクト第2弾「第一回気仙沼バル」―仮設商店街に地元客の賑わいを」

「第一回」とあるので第二回もあるのだろうと思ってはいたのですが、9月は最後の実務補習やらなにやらでばたばたしていて、バルのことはチェックしないまま気仙沼に向かいました。現地で第二回が翌週にあると知ったのです。

イベントを一過性に終わらせず継続されていることを現地で知しりました。一部の方ですが、現地の方のお話しも聞けました。継続的に支援先に寄り添うことがいかに大切かということを、現地の方のお話聞きながら実感したように思います。

こうした、僕が感じたことを第4章を読んでいただけたらわかっていただけるのではないかと思います。

第1章~第3章は、この活動に関わった診断士の方が書かれています。多くの方が分担して執筆しているので最初は読みにくいかもしれません。でも、慣れてくれば、さまざまな角度からこの活動を知ることができるし、それぞれの方がどんな想いで関わってきたのか、わかると思います。

多様な読み方ができる本です。パラレルキャリアを考えたい方、復興支援について考えたい方、(復興云々に関係なく)町おこし事業について考えたい方。それぞれの立場で得ることがあると思います。

僕自身は、診断士の端くれとして、自分のこれからの診断士活動をどのようにしていけばいいのか、あらためて深く考えるきっかけになりました。自分も動かなきゃ、という衝動がむくむくとわいてきました。一人じゃなにもできないかもしれませんが、動き出さないとなにも始まらないので。




南町紫市場
気仙沼市場 
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2014年9月2日火曜日

【書評】自ら動く。その先にやるべき支援が見えてくる~『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』/藤沢久美



7月末、経済産業省の有識者委員会で、「小規模企業振興基本計画」の原案が大筋、了承されまた。中小企業の中でも事業規模が小さい小規模企業向けの支援策をまとめたものです。中小企業の約9割を占める小規模企業に特化した支援策を打ち出すことで「アベノミクス」の効果を地方にまで波及させていくことが狙いだと言われています。

このように日本には、さまざまな中小企業支援施策があります。正確にその数を把握できる人はいないのではないか、というほど多数存在しています。しかし、十分な成果をあげている言い切れるものはけっして多くありません。そのなかで、川崎市の支援策は大きな成果をあげていると言われています。本書では「川崎モデル」と呼ばれるその施策について、それがどのようにして生まれ、継続してきたかについて考察されています。

『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』 藤沢久美(著)・実業之日本社(出版) 
<目次>
プロローグ 川崎モデルについて
第1章 川崎モデルの誕生までの歩み―工都・川崎市の空洞化
第2章 成功例で見る川崎モデル―成功の鍵は「癒着ではなく密着」
第3章 川崎モデルの営業スタイル―企業の強みを見える化する方法
第4章 川崎モデルのチームづくり―大企業・銀行・大学・中小企業・役所
第5章 イノベーションを生む川崎モデル―オープン・イノベーションの実現
エピローグ 川崎市のさらなる進化


■川崎モデルとはなにか?

「川崎モデル」とはなんでしょうか。実は本書に登場する人それぞれが異なるモデル感を持っています。人により定義は異なります。しかし、すべてに共通する部分もありました。
支援する人々が企業のことをよく知っているということ、そして自分のことのように企業のために何をすべきかを考え、実践する。しかもそれは、一人の担当者がリードして動くのではなく、支援担当者それぞれが創発的に動き、多くの人を支援の渦に巻き込んでいく。(p14)
具体的には次のような流れで進んでいきます。(p203の図表から)
1、元気な企業の発掘
まず、市役所の職員がうごくわけですが、アンケートやSNSのチェック、経営者との勉強会や金融機関からの紹介を通して、市内の元気な(中小)企業を発掘していきます。
2、企業の強み発見
キャラバン隊(市役所職員、コーディネーター、金融機関、大企業知財担当者など)で訪問し、経営者との面談を通して強みを発見していきます。
3、強みの見える化
市が行う各種認定制度や受賞イベントへの応募促進。そして認定・受賞後はメディアへの露出を後押しする。
4、オープン・イノベーション
大企業との知財交流、大学との共同研究、異業種企業とのコラボレーション、といった活動への支援



■「川崎モデル」は他となにが違うのか?

多くの自治体で、3、「強みの見える化」ついては取り組まれています。各種認定制度や受賞イベントの企画は全国で行われています。別に川崎市以外の自治体が中小企業支援について積極的ではない、ということではありません。

ただ、認定制度を作ったり、受賞イベントを企画したりして、「さあ、応募してください」と待っているところが多い印象を受けます。そこが違いです。川崎は市役所自らが動きます。自ら発掘し、訪問し、「こんな強みがあるのだから応募してください」と促しています。

行政の職域を超えるのではないか、という批判はあり得ます。実際、このモデルを確立していく歴史の中では、市役所内部からの強い反対もあったと書かれています。しかし、危機感と強い意志を持ち、支援に取り組み続けた職員がいることでいまの形を作り上げてきました。先頭に立って動く人がいるからこそ、金融機関や大企業など多くの人々がその輪の中に巻き込まれてきたのです。

大企業と中小企業が連携することで、新しい製品の開発の可能性が高まります。双方にメリットがあるわけです。その場合、中小企業側には大企業に対する警戒心はあるでしょうし、また大企業側にも下請け意識がないとは言い切れません。しかし、川崎の場合、市が関わることでそうした懸念が払しょくされています。もちろん、ただ関わるだけで払拭できるわけではなく、上に示したようなさまざまな取り組みがあるからこそ、中小企業も大企業も市を信用して、動くことができるのです。

その結果、いままでにない製品やサービスが生まれてきています。「川崎発」のイノベーションが起きているといっても過言ではありません。

■新しい中小企業支援の可能性

本書のタイトルは『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』です。過去形を使っていいのか、という疑問はあると思います。成功とはなにを指すのか、という指摘もあり得ます。しかし、いままでにない取り組みをし、それを継続し進化させてきていることは間違いありません。川崎市のやり方が、多くの自治体や中小企業支援機関のモデルになり、川崎市もまた、いまのやり方を進化発展させていく。そうすることで、日本の中小企業支援はいま以上に有効性を増していき、日本の潜在力がいっそう発揮できるようになると私は考えています。

その際に、忘れず心がけなければいけない前提はたったひとつです。これさえクリアできれば、あとはそれぞれ地域がそれぞれの特徴を活かしたやり方で取り組んでいけるはずです。

まず、自ら動く。しかし、それは市役所職員などの役所の人間だけに求められることではない。中小企業支援に本気で取り組みたいと思うなら、まず自ら動き、経営者と語り合い、経営者の同志になる。そのとき初めて、支援のために自分がやるべきことが見えてくる。そして、それを実現するために必要な仲間も見えてくる。(p224)
「中小企業支援」に関わる人たち―それは役所の職員だけではありません。金融機関や大学をはじめとする研究所関係者、NPO法人の方や中小企業診断士など各士業の方々。そうした人にとって本書は、新たな視点とヒントを与えてくると思います。


<参考記事>
自ら動く。その先にやるべき支援が見えてくる~『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』(中郡久雄 中小企業診断士)/シェアーズカフェ・オンライン

自ら動く。その先にやるべき支援が見えてくる~『なぜ、川崎モデルは成功したのか?』(中郡久雄 中小企業診断士)/ Yahoo!ニュース



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